5時半に目覚まし時計が鳴り、それでも、一緒に手伝ってくれる妻が起きてくるまでは、と言い訳を見つけて温かい布団から出るのを躊躇(ためら)っていると、時間に正確な妻が起きて来るのが聞えた。意を決して腹筋に力を入れて半身を起こし、その勢いで立ちあがり、布団もそのままにしてさっさと作業着に着替え、軍手とハサミ、それに回収用トン袋を二つ用意して外に出た。
2月になったとはいえ、まだ真っ暗だが、空を見上げると星が見える。一昨日降った雪は、もう跡形もない。小型の携帯用サーチライトを車庫の袖にくくりつけて作業開始である。
車庫の車の鼻先にトン袋を広げ、車の後ろに壁となって積み上げられたキャップが詰まった袋を運び出しては、ハサミで口を切ってトン袋に移していく。これだけの作業なら、街路灯の明かりで十分なのだが、袋を逆さまにして中身を広げて見ると、アルミキャップあり、栓あり、プルタブあり、ゴミがあり・・で、それらを選りわけながらの作業にはライトが必要なのである。
寒いせいもあるが、既にこの作業に慣れた熟年夫婦二人は、寡黙である。ときどき、思いもよらぬものが混じっていると、小さな奇声を発する妻の、後に続く小言に同調して吸収してやるのが私のもう一つの役目だ。多少の難儀はあるが、街の方々がこのような足元の小事をしてくれることは、感謝に値するとともに、私にとってもこの上ない喜びなのである。
花粉の攻撃が始まるこの時期、マスクをして作業する妻の表情の総ては見えないが、今日は機嫌がいいようである。しかし、二人はあくまでも寡黙である。
6時をとうに過ぎ、2袋目を広げたころ、昨夜妻が声をかけていた正月に27歳になったばかりの長男の大ちゃんがようやく起きて来て手伝ってくれた。彼も、毎回遅刻はするが、良く手伝ってくれる。一人増えると一気にはかがいく。6時半を回った頃、作業終了。今回は2袋だが、総量は1.4か1.5というところ。トラック回収の方にお小言を頂戴することを知っている妻のお小言を、ここでも吸い取る。
妻に感謝、大ちゃんに感謝。街の方々に感謝。そして、地球に感謝。
いつものお出かけ時刻を過ぎてしまったので、今日の朝の活動は中止にして、そのまま出勤することにした。
シャワーを浴びようとして脱衣場に行くと長女のみっちゃんが起きてきた。「おはよう!」2日後に公立高校の入学試験を控えた彼女の機嫌も良いようだ。「昨日はお爺ちゃんの命日だったんだけど、お線香をあげた?」あわてて仏壇に向かうみっちゃん。その仏壇のある奥の和室で、目覚めたのであろう87歳になる認知症の進んだ私の母の世話をやく妻の声が聞える。
さあ、今日は節分。そしていつものとおりのいい日だ!「鬼は外、福は内~!」
おわり
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